お薦めの本

2018年4月 1日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2018年4月

『健康で文化的な最低限度の生活 1~6巻』
     柏木ハルコ ビッグコミックス 2014 小学館
 昨今、子どもの貧困が問題となっていますが、高校でも厳しい環境の中で高校生活を送っている生徒も少なくありません。生活保護については不正受給ばかりがクローズアップされて、生保を受けることが悪であるかのような誤解や偏見を生んでいるように感じます。
主人公義経えみるは大学を卒業して、生活課に配属となった新人ケースワーカーです。空気が読めないことがコンプレックス。担当する生保受給者やその家族たちとのコミュニケーションで悩みながらも、ベテランケースワーカーでえみるの指導係半田さんたちのアドバイスで少しずつ成長していきます。生活保護の現場の厳しさや様々な問題を主人公たち新人ケースワーカーの葛藤とともにリアルに描いています。
                                    YE
 

『神様の裏の顔』
     藤崎翔  角川文庫 2016 角川書店
 神様のような教師が亡くなり、参列者が涙とともに故人を偲ぶ。いろいろな参列者が故人について語る話が紡がれていくが、途中から、本当にそうなのかという疑惑が生れる。一度生れた疑惑はふくらみ、先生は実はとんでもない人だったのではないかと疑われるが…。二転三転するお話。最後まで読むと必ず最初から読み返したくなります。ネタばれするといけないので、これぐらいしか紹介できません。
                                    ME

『賢治と鉱物 文系のための鉱物学入門』
     加藤碵一 青木正博  2011 工作舎
 [りんだうの花は刻まれた天河石と打ち劈かれた天河石で組み上がり、その葉はなめらかな硅孔雀石で出来てゐました。]宮沢賢治の童話「十力の金剛石」の一節です。
 
 賢治の童話には、多くの鉱物が登場します。作中における鉱物とはもちろん物語を彩る道具の一つなのでしょうが、賢治独特の表現―ガラス細工のような装飾音の響きに「色は?形は?一体どんな石なのだろう」と想像力がかきたてられたものです。 
 この本では、賢治の作品に登場する鉱物を、豊富な写真とともに紹介してあります。読み物として冒頭から丁寧に読むのも良いですが、賢治童話の傍らにおいて、物語を一緒に楽しむのがおすすめです。

                                    MA        

         

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2018年3月11日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2018年3月

『ある小さなスズメの記録
 ~人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』 
   クレア・キップス:文 梨木香歩:訳 文春文庫 2015 文藝春秋
 第二次世界大戦下のイギリス。足と翼に欠陥があるため親に見放され、巣から放り出された雀の雛が、ピアニストであるキップス夫人に拾われた。奇跡的に命拾いをした雀(クラレンスと命名された)は、キップス夫人に愛情深く育てられ、驚くことにちょっとした芸を覚え、独特のさえずりを獲得する。防空監視員の仕事をしていた著者によって、クラレンスの芸と歌は人びとに披露され、戦中に敵機襲来に怯える人々の小さな慰めとなっていく。
 本書は特異な才能を開花させたクラレンスとキップス夫人が共に暮らした12年間の実録。小さくて、傷ついた存在が、賢く、気高く生きぬく様子は感動的である。
                                        (YS)

『謎の独立国家ソマリランド
 ~そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』 
   高野秀行 集英社文庫 2017 集英社
 寡聞にして、私はその国の存在さえ知らなかった。しかも、国家体制が崩壊しているソマリアの中で奇跡的に平和を達成しているという。アフリカ最大級の謎である!辺境探検、異文化体験の著作を専らにする著者が、その謎に着目し、真相を確かめるべく世界で最も危険なエリアに飛び込んだ。
 実は、ソマリ人は傲慢で、いい加減で、荒っぽく、弱肉強食社会で、平和主義とはほど遠いのだが、平和が維持されている鍵は、氏族間の関係という内部事情と、海賊国家プントランドと戦国状態のソマリアに隣接するという外部事情にあるらしい。覚醒植物カートに翻弄され、海賊やイスラム過激派に狙われるという体験をしながら書き上げた著者渾身のルポルタージュ。読み手はあたらしい発見に幻覚される。
                                       (YS)

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2017年12月17日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2017年12月

『LittIe tree』 駒形克己
        ONE STROKE  2015
 しかけ絵本です。
 形は絵本ですが、どちらかというと大人向きで、美術品のような雰囲気があります。
小さな芽が出て、少しずつ大きくなって、鳥や人や季節が通り過ぎていく、そしてまた・・・。
読む人のその時の気持ちによって、いろいろな読み方ができると思います。ページを開いたときの光の入り方によって影の位置なども変わって、展示しておいてもステキです。本のまわりの空気が変わります。
                                       (YM)





『今日も一日きみを見てた』  角田光代
         (角川文庫)KADOKAWA 2017
 猫とは「わがままで、気まぐれ、人に媚びない」と括られることが多い。しかし、この本で語られるきみ(=トト)は、そんな世間一般の猫像を軽々と超えている。
 西原理恵子さんから譲られて、角田さんちにやってきた小さなふわふわの生きもの、その仔猫はトトと名づけられた。その日から寝床やトイレやタワーや餌など、生活環境を整え、一緒に遊び、必要に応じて病院に連れて行き・・・と、トトを中心に据えた生活が始まる。猫と暮らすのは初めての著者にとって、日々新しい発見の連続だ。トトとの生活を通して見ると、猫という類型概念で彼女を捉えることはあまり意味をなさない。トトを愛しく思う角田さんの文によって、トトの健気さ、可愛さ、唯一無二の個性が際立っている。
                                       (YS)

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2017年11月12日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2017年11月

『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』 
                   サンキュータツオ著
              (角川文庫)KADOKAWA2017(4版)
 200冊以上の辞書を収集し、辞書一冊一冊の個性特性キャラクターに入れ込み読み込んだ著者が、その違いを私たちにもわかるように、その知識を“解放”してくれる。国語辞典といっても、「語感」や「表現読解」の辞典など、ふだん手に取ることの少ない辞典もオススメされていて、新たに発見した気分を味わえる。オススメどころの辞典もキャラが立っていて、自分のお気に入りの辞典がどう分類されているのか読んでみるのも楽しい。編者のこだわりの差やルーツなど、それぞれの辞典の深い味わいが感じられて、辞典を選ぶのが楽しくなりそうである。
 2013年に出版されていたものを改訂・文庫化。夏のカドフェスに入っていたので、目につき手に取りやすくなっている。そして手に取る自分であった・・・・・・。
                                       (OY)
『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』 
                            栗原類著
                           KADOKAWA 2016
 
 いまさらここで紹介しなくても十分話題かと思いますが……。
 「ネガティブイケメンモデル」として世に出た栗原類(少々変わっているようには見えてもネガティブとは思わなかったですが…)。しかし彼は発達障害(ADD:注意欠陥障害)で、時間を守ることや人の表情を読むことなどがとても苦手だそうです。8歳の時に発達障害の診断・初期のサポートをアメリカで受けることができたこと、日本での主治医も近くに見つけられたこと、母の理解、そう、彼はラッキーでした…が、そこで「なーんだ」と本を閉じないで!当事者、母(も発達障害)、主治医、友人(又吉直樹)と、本人や周りの話が1冊におさまっている読みやすい本です。サポートや理解の大切さ、「少しずつできることを増やしていけばいい」「自分でいいんだ」というメッセージはどんな人にも届くと思います。
                                       (WM)

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2017年7月30日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2017年7月

『見たい、知りたい!日本の庭園』
ライフサイエンス著 三笠書房(知的生きかた文庫)
 日本庭園を眺めることが好きだ。
計算され造られた美でありながら、自然が息づいている。
そこが魅力だ。
 この本には、全国の選りすぐりの庭園が載っている。
歴史、特徴、見所などが書かれていて庭園鑑賞入門にはピッタリの本である。                                                                   (AK)
                     



『人生の親戚』 大江健三郎著 新潮文庫
 ふだんは出てこなくても、ときに現われる人生の親戚…それは人生に訪れてくる…苦しい悲しみです。会いたくなくても会わないといけない、そしてどうしようもなく巻き込まれる。人生にはそんなことがあります。そういった深い悲しみに直面したとき、人はどうしたらいいのでしょう?
「本を読む」―という方法があります。悲しい喪失から恢復する物語として大江さんの作品はお薦めです。このお話の主人公は人生に襲ってきた悲劇に打ちのめされ、挫けながらも事態に直面していく。日々苦しんで苦しんで、その果てに人生の地平を切り開いていく・・・(魂の癒しを探り、生きることへの励ましを発見する )
読書は視野をひろげ、我々をおもってもいない地平へと誘ってくれます。ちょっとオーバーかもしれませんが、読書にはそんな力があると思います。                                                                       (SI)
                                                                                                    

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2017年4月 9日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2017年4月

『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン 新潮社 2016/6
人付き合い(?)が苦手なハリネズミ。思い切って森の動物たちに遊びに来るように手紙を書いても「…でも誰も来なくても大丈夫です」なんて付け加えてしまうし、手紙も結局引き出しにしまったまま。そして、もしクマが来たら…アリが来たら…と何日も想像し続けている。みんなを遠ざける(と思っている)自分の針を嫌いながらも、どこかその針にプライドを持っているようなハリネズミ。いるよね、こんな子(自分もそうかも)。最後、彼は変わるんだ ろうか…?
ところで、この延々と続くネガティブな妄想、挫折しそうなほど長い。でも、毎日ちょっとずつ読むといいかも。しんとした静かな雰囲気の、不思議な読後感の本だった。

『世界しあわせ紀行』エリック・ワイナー 早川書房 2012/10 ハヤカワ文庫2016/6
(ちょっと前の本ですが、文庫は去年出たので)
ジャーナリストの著者は「不幸」ばかり取材するのにうんざりして「幸福な国」を探す旅に出る。訪れるのは、オランダ・スイス・ブータン・カタール・アイスランド・タイ・インド、不幸代表でモルドバ・イギリス(の一番不幸な町)、それに祖国アメリカ。
それぞれの国での幸福の考え方や価値観がおもしろく、対して自分だったら何を幸せとする か、それをどうやって測ろうか…と考えながら読むのは、なかなかに幸福な読書体験だった。できたら、誰か日本の人が同じ国を訪れで『世界しあわせ紀行・日本版』を書いてくれないかなあ。

                                     (MK)

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2017年3月18日 (土)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2017年3月

『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』
ジェイムズ・リーバンクス著 濱野大道訳
早川書房 2017年 1月刊行
 ビアトリクス・ポターの絵本の舞台で、世界中から多くの人々が訪れる有名な観光地でもあるイギリス湖水地方。この景観は数千年にわたる牧畜によって形作られました。
著者はこの地で600年以上続く羊飼いの家系に生まれ、自身も農場を経営しています。祖父や父と同じように十代半ばで学校をやめ家業を手伝い始めた彼ですが、1冊の本との出会いをきっかけに、ついにはオックスフォード大学で学ぶようになります。ユネスコのアドバイザーを副業とし、ツイッターのフォロワーが8万人という現代の羊飼いが書いたこの本は、湖水地方を初めて内側からの視線で描いた記録として貴重なものだと思います。
                                                   (MS)


『アウシュヴィッツの図書係』
アントニオ・G・イトゥルベ著 小原京子訳
集英社 2016年 7月刊
 第二次世界大戦のドイツにおいて、ナチスがユダヤ人虐殺のために複数の収容所を作っていたことは私たちもよく知るところです。ですが、その収容所の中に図書館があったことは知っていますか?特に有名な「アウシュヴィッツ・ビルケナウ絶滅収容所」。その中に、たった8冊の蔵書しかない図書館があったのです。図書係を任されたのは14歳の少女・ディタ。彼女の仕事は、毎日違う場所に本を隠すことでした。
 正直、暗くて重い本は苦手で、読み進めるうちに何度も挫折しそうになりました。アウシュヴィッツの悲惨な状況はやはり辛く、早く戦争が終わらないか、記された日付にハラハラします。けれど、この中には読む価値のある大切な言葉がたくさん書かれています。希望がない中で本を読むということ、明日が来なくても勉強すること。本の持つ力を再認識させてくれます。
 スマホさえあれば…という世の中にやる気を奪われつつある今だからこそ、私たちの仕事に勇気を与えてくれる一冊でした。
                                                   (RK)

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2017年2月11日 (土)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2017年2月

『+1cm(イッセンチ) たった1cmの差があなたの世界をがらりと変える』
  キムウンジュ/文 ヤンヒョンジョン/イラスト 簗田順子/訳 文響社編集部/訳
  文響社  2016年7月刊行

 生き方を指南くれる人生論を語る本はいろいろありますよね。この本もそんな本の一つではあるのですが、ユニークな物事の見方は、今までに無い感じ…。韓国とアメリカで75万部超えのベストセラーなのだそうです。ほんの少しそれこそ1㎝だけ見方を変えるだけで悩み事の本質が見えてくるなんてことは、確かにあることです。さりげなく簡潔で優しい言葉が可愛らしいイラストとともに綴られているのがこの本の大きな魅力。ネガティブな気持ちや考え方が変わればきっと良い結果が得られるはず…。将来が不安、自分の事が好きになれないなど悩み多き高校生に手渡してあげたい一冊です。
                                   (MT)

 


『昔話法廷』
  NHK Eテレ「昔話法廷」制作班/編 今井雅子/原作 イマセン/法律監修 伊野孝行/挿画
   金の星社  2016年8月刊行

 この本で描かれるのは、不思議な裁判です。オオカミを殺そうとした末っ子の子ブタは有罪なのか?! おばあさんの敵討ちのためにタヌキを殺そうとしたウサギの罪は?! そして、白雪姫に嫉妬して彼女を殺そうとした王妃は…?! おなじみの昔話を現代の法廷で審議、裁判員制度を考える話題のNHK Eテレの番組(2015年8月放映)を小説として読む事ができます。TV番組と同様、判決は出ません。大切なのは罪について自分で考えてみることなのですね。読みながらゆっくりしっかり考えることができます。映像を受動的に観るのではなく、読書により自分のペースで思考できることがおすすめポイントです。                             (MT)

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2017年1月28日 (土)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2017年1月

1月のオススメ本です。


『ルポ  保健室』  秋山  千佳 著  朝日新書
 貧困や虐待、LGBTなど今の子供達が抱える問題に正面から向き合う中学校の養護教諭たちの姿。中学校の保健室も高校も同じだと感じました。
 「困った時には保健室においで」 その言葉で保健室登校を始め夢を見つけて卒業していく生徒たち。高校へ進学してそこで連絡が途絶える生徒もいるけれど、きっと中学での経験を生かして不器用でも前進していてほしいと思いました。
 図書館が第二の保健室と呼ばれようになってずいぶん経ちます。私たちも生徒に対しどのようなアドバイスができるのか参考になることも多くありました。「性はグラデーション」という言葉がとてもしっくりときました。
                               (AF)

『赤ヘル1975』重松清著 講談社文庫
 2016年はプロ野球広島カープが25年ぶりにセ・リーグ優勝を果たし、流行語大賞も緒方監督が鈴木誠也選手の活躍に対して放ったひと言「神ってる」が受賞するなど、カープ大活躍の年でした。
 本作品は、カープが球団創設以来初のリーグ優勝を成し遂げた1975年の広島市を舞台に、中学1年生の少年三人組の友情を描く物語です。
(カープの活躍場面もいたるところに挿入されています。)
                               (MH)

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2016年12月12日 (月)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年 12月

12月のオススメ本です。

『刀伊入寇』 葉室麟著 実業之日本社文庫 2014年刊

 清少納言が仕えた中宮定子の同母の弟・藤原隆家を描く時代小説です。「枕草子」や清少納言について書いた本はよく読んでいたのですが、隆家を主人公にした本は初めて読んだので、とても興味深く感じました。もちろん、清少納言や中宮定子、道長や安倍晴明なども登場します。渤海国の末裔が怪しい影となって京の都に暗躍するという少し伝奇小説っぽい設定もなんだかおもしろいです。この本を読むまで「刀伊の入寇」(史実)という事件を知りませんでしたし、定子の死後、藤原道隆の子どもたちがどうなったかもあまり考えたことがありませんでした。中の関白家の没落後、隆家が大宰権帥としてちゃんと赴任して、しかも大陸からの侵略を防ぐという大活躍をしていたとは・・・! (CF)



         

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