書籍・雑誌

2016年6月 1日 (水)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年5月 プラス・・・

おすすめ本の紹介の前に、司書委員会活動紹介を1件
◎5月21日におこなわれた第71回京都府立高教組定期大会の「宣伝・通信コンクール」に5種類のビラやニュースを出展し、私たちの機関紙「司書委員会ニュース」(年間10号発行)は「その他の部」最優秀賞でした!「ビラの部」優秀賞、「努力賞」を含め4枚の表彰状をいただきました。

2016

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年5月



『流』 東山彰良著 講談社刊 1728円
 1970年代の台湾が舞台。高校生葉秋生の祖父は何者かによって殺されます。祖父を殺したのは一体誰なのか?という謎を抱えつつ、暴力や友情や恋に無軌道に生きる主人公秋生の激しい青春の物語です。全ての描写がまるで映像を見ているかのように生き生きと描かれ、自分もこの物語の中に生きているような感覚で時間を忘れて読みふけりました。まさしく超弩級の面白さです。
 直木賞審査員が全員一致で選んだというのもうなずけます。(あ)


『永い言い訳』 西川美和著 文藝春秋刊 1728円
  「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」。読み終わった後、この言葉の意味がきびしく胸に迫ってきました。誰しもが日常や人生において、思い当たることがあるのではないでしょうか。
  長年連れ添った妻を突然のバス事故で失った人気作家の津村啓は、悲しさを“演じる”ことしかできません。同じ事故で母親を失った一家と出会い、初めて妻と向き合い始めるのですが…。
一筋縄ではいかない人間の関係の幸福と不確かさを描ききった、心揺さぶる作品です。著者は映画監督でもあり、すでに映画化もされています。(あ)


『人の前に出る仕事の人へ。』 加藤昌史著 ぴあ 2015年12月刊

自分の考え方やコミュニケーションの仕方が凝り固まっているなぁ・・・と感じたらぜひ読んでみてください。人間関係においていろんな物事を良い方向に流すためのヒントが詰まっています。正直なところ、読んだからといってすぐに実行するのは難しいとは思いますが、それでも明るい気分になれます。教職員など人の前で話す機会の多い人はもちろん(そもそもこの本ができるきっかけは、教員を目指す学生への講演にあったようですし)、そうでない人、普通の大人や学生・高校生にも示唆に富んだ本です。著書は演劇集団キャラメルボックスの創立メンバーで、製作総指揮。舞台を見に行けばロビーや開演前の説明などで、観客と劇団の間を取り持つ人としてお目にかかれます。(ち)

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2016年4月22日 (金)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年4月

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年4月

 
 14歳で欧州一人旅、17歳でイタリア留学。まず、彼女のお母さんがすごい! 14歳の娘を欧州一人旅にだしますか? この旅が彼女のその後を決定づけます。安部公房の本を面白いと思って読んだことがなかったのですが、彼女の安部公房の読み方をみて、初めて安部公房の本の理解の仕方、すごさといったものがわかったように思いました。その他彼女の本の読み方やその豪快な地球サイズの生き方に「私の人生、小さいわ~」と思えてきます。


ワンダー Wonder 』 R・J・パラシオ著 ほるぷ出版刊 2015年 

10歳のオーガスト(オギー)はパパとママとお姉ちゃんとデイジーから本当に愛されて育ったごく普通の男の子。パパ譲りのユーモアもある。でも彼は自分が普通じゃないことを知っていた。自分の顔が普通じゃないことを。勉強はママに見てもらっていた。けれど、ずっとこのままじゃいけないって学校に行くことになった。でも彼は知っていた、自分の顔が普通じゃないことを。そのことは受け入れていた。でも、傷つかないわけじゃない――。そんなオギーが初めて学校に通った1年間を書いた物語。

主人公はオギーですが、語り手は章ごとに変わります。弟・オギーから離れた場所で戸惑う姉・オリヴィア、オギーのクラスメイト、オリヴィアのボーイフレンド・・・。誰の気持ちも否定できない、間違っていると言えない。惜しむらくは「いじめっこ」の視点がなかったことかな。(と思ったら、未邦訳のスピンオフに載っているみたいです。)

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2016年3月31日 (木)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年3月

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年3月


ふたえ 』  白河三兎著 祥伝社 2015年刊

ドン臭い「ノロ子」、地味少年「ジミー」、将棋マニアな「劣化版」、無口で影の薄い「美白」、シュールで占い好きの「タロット」、あわせて5人は、教室の片隅でひっそりと生きる「ぼっち」(高校生)たちであった。そこに一匹狼で、破天荒な転校生「手代木」が現われ、その日常が少しずつ変化し始めていく。それぞれの人生で始まる大冒険。舞台は修学旅行で訪れた京都。マンガミュージアムにいる筈だった四日間に、次々とおこる青春イベント!   6編からなる切なくて爽やかな短編集のようでいて、全編を通して大きな謎(トリック)が埋め込まれている。修学旅行の班メンバーは6人のはずなのに、なぜか7人いるような気がしてくるというミステリー!。話のあちらこちらに潜まれている謎めいたキーワード。そしてそのすべての謎がラストの章であかされる。(とんでもないどんでん返しが…)。   いや~これは傑作ですね。一本取られたようなすがすがしさがあります。あとタイトルも 本の表紙も意味深で、とても凝っていますね。(表紙の絵にひっかかりました) 「これだから読書は止められない…」そんな気持ちになる作品でした。(S)


『はたらく細胞』 1~2巻(既刊2冊、以下続巻) 清水茜著 講談社 シリウスKC


肺炎・花粉・インフルエンザ・食中毒・熱中症・ガン…。 体は日々数々の脅威にさらされている。その時体内ではどんなことが起こっているのか。 体を守る細胞一つ一つが自意識を持っていたら?「細胞擬人化漫画」です。(あ)

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2016年3月 6日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年2月

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年2月

むしのほん』  エドワード・ゴーリー作  柴田 元幸訳  河出書房新社  2014年刊


蟲の神』  エドワード・ゴーリー作  柴田 元幸訳  河出書房新社  2014年刊

エドワード・ゴーリーの『むしのほん』『蟲の神』という絵本を紹介します。

彼の絵は黒一色で線の多いのが特徴ですが、ごく初期の『むしのほん』は線が単純でむしに赤・黄・緑の色がついています。そのカラフルなむしたちが、真っ黒な邪悪なむしをやっつけるという単純なお話です。でも、彼の話がそんな単純な話のはずはないのだが……。もう片方の『蟲の神』は彼の特徴をよく表し黒一色の絵本です。誘拐された子どもの話で、言うことを聞かないとひどい目にあうという教訓的な話ですが、彼がそんな作品を書くはずがないとしたらその真意はどこにあるのでしょうか。さて、かわいらしげな『むしのほん』、おどろおどろしい『蟲の神』、あなたはどちらが怖いと思いますか。(み)

『虫の虫』 養老孟司著 廣済堂出版 2015年刊
もう一冊は、養老猛さんの『虫の虫

。養老猛といえば、解剖学者で『バカの壁』など脳に関する本を多数書き、テレビにも出ている有名人ですが、超がつく虫好きです。彼の虫に関するエッセイとラオスでの虫採りのお話の本です。虫が嫌いな人は絶対読めない本だと思います。虫が好きな人、ちょっと興味がある人ぜひ読んでみてください。前半のインドア編は、屁理屈をこねまわしている部分もあるが、後半のアウトドア編「ラオスで虫採り」はとってもおもしろいです。

『心にナイフをしのばせて』奥野修司著 文藝春秋 (文春文庫版は2009年刊)

 少年Aの某書を読むよりも、この本を読む方がずっと自分のためになる、と思います。

 神戸連続児童殺傷事件の28年前に、高一の少年が起こした残忍な殺人事件。著者は丹念に事件を調べ、被害者家族の人生を追いかけています。同級生に息子(兄)を殺された被害者遺族の心の傷は深く、理不尽な思いばかりが募り、読後も納得できない思いだけが残ります。犯罪を――殺人を――犯す、ということが、遺された人たちをどれだけ苦しめるのかということを知ってほしい。被害者遺族の心を癒やすことができるのは、犯した罪を心から悔い、罪を償う気持ちを抱いてくれることだけなのかもしれません。それができないなら、更正したとは言えないのではないでしょうか。
 私は単行本で読んだのですが(文庫化もされています)、2006年の刊行当時から被害者家族の救済に関してはわずかしか進んでいないのでは?という気がします。誰もが納得できる救いを得られることを願ってやみません。(よ)

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2016年1月31日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年1月

司書子さん☆今月の一冊二冊 2016年1月

司書子さんメンバーが思い思いのお薦めの本を紹介します。輪番で執筆します。

生きものの持ちかた;その道のプロに聞く』 松橋利光著 大和書房 2015.8   本体\1500

文字通り、生きものを素手で(危ない場合には道具も使うけれど基本的に「手」で)持つときの方法やコツがていねいに説明されている本です。身近な昆虫やペットからアブナそうな爬虫類などの動物までを、生きものカメラマン、ペットショップオーナー、獣医さんが実際に持ったり抱いたりしている写真が満載。(私は苦手で直視できない写真もあります・・・)それにしても、さすがはその道のプロ!どうすれば生きものを無駄に傷つけず人間もより安全に持てるのか、よく考えておられてすごいです。 幼児教育・初等教育志望の生徒さんは、チョウ、トンボ、カブトムシなどの持ちかたを見ておくといいですね。タランチュラを手に乗せる技は知らなくてもいいかもしれませんけれど。         (み)



セラピスト』 最相葉月著 新潮社 2014  本体価格¥1800

著者の「こころを知りたい」という熱意がひしひしと伝わってくる本である。  この本では、カウンセリングの世界について、歴史、方法、事例、現状がわかりやすく解説されている。  読んでいて、まるで自分自身が、河合隼雄氏に箱庭療法を受け、中井久夫氏に絵画療法を受けて、癒されていくかのようであった。  人は、皆、心を病んでも内面に自ら治っていく力を持ち、優れた治療者に出会えば、対話や共に過ごした時間によって回復していくことがよくわかった。  読後感は、これからも自分自身を生きてよいのだという安心感に包まれる。  (あ)

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2015年11月23日 (月)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2015年11月

司書子さん☆今月の一冊二冊 2015年11月

京菓子と琳派: 食べるアートの世界』 濱崎加奈子/監修 勝冶真美/編集
             淡交社  2015.8月刊行  
俵屋宗達や尾形光琳らに私淑(直接に教えは受けないが、密かにその人を師と考えて尊敬し、模範として学ぶこと)した芸術家による日本文化の一大潮流である、琳派。今年は琳派の創始から400年の記念の年ということで様々な展覧会が行われていますね。また、京菓子は、江戸時代の京都に誕生した、世界でも稀なる芸術的な菓子と言えます。この本は、琳派をテーマに制作された京菓子を紹介しながら、日本文化の奥深さを教えてくれます。
京菓子も琳派も王朝文化の長い歴史や茶道文化の美意識の上に成立する、我が国が誇るべき知的なアートなのだということがよくわかります。(ま)


わるいうさぎ』 中島さなえ/著 双葉社 2015.8月刊行 

 ラボの試料保管室から脱走したウサギの「RB203」は、研究員たちに〈わるいうさぎ〉と呼ばれていた…。生まれて初めて見た世界で出会ったのは、タヌキの〈タンバ〉。ラボとは全く違う「野狸放団」のアジトでの生活で、〈わるいうさぎ〉の運命は変わっていのです…。
プロローグに登場するフクロウに導かれて読んでいくと、登場する動物たち(ウサギ・タヌキ・ネズミ・イヌ・野ブタ・タカ…)のお話がまるでジグソーパズルの断片ようにピタッ、ピタッと嵌まっていく感じが心地よい…そんな近未来のお話。ちょっぴりブラックで、どこか可笑しくて、気がつけば物悲しくなる連作短編集。著者、中島さなえさん(中島らも氏の娘さん)が描く世界に、いつの間にか引き込まれてしまいます。(ま)



メガ! :巨大技術の現場へ、ゴー』  成毛 眞著 新潮社 2015

 大人の社会見学と銘打ち、各地の巨大施設を紹介する1冊。8.4キロ掘って誤差数ミリの首都高地下トンネル、15秒刻みのダイヤを制御する新幹線の総合指令所(安全のためどこにあるかは極秘!)。世界初の海に浮かぶ風力発電所など、普段目にすることのない巨大施設が登場します。日本だけでなくダン・ブラウンの『天使と悪魔』でアヤシイ組織のように描かれていた、欧州原子核研究機構(CERN)も紹介されています。  一番興味深かったのは1日最大200万冊が動いている日販の流通システムで、取り寄せの本は750万冊の在庫がある倉庫から、担当者がピックアップしてくるのだとか。扱う本は書誌データだけでなく重さも登録されていて、箱詰めのあと重さを計ることで送品事故を防いでいるそうです。 巻末には「桁違いになるためのブックガイド」や「さらに桁違いになるための見学リスト」もあります。「桁違い」に興味を持たれた方はぜひ。(み)

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2015年11月 1日 (日)

ミニノートづくりワークショップ

 10月25日(日)、第65次京都高校教研が行われました。司書委員会の担当は午後から行われた課題別分科会「豊かな図書館教育」。
 今年はワークショップ1本、レポート1本、ミニレポート10本余り、と盛況で、大幅に時間オーバーになり、最後は会場ロビーでも交流するほどでした。
  ここではワークショップ、ミニノート作りについて報告します。
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上の写真のような材料から
下の写真のようなハードカバー表紙を作り、中に紙を挟み込めばステキなオリジナルのノートが出来ます。大きさはA6判です。
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  図書館行事などにも応用できる布装のハードカバー表紙を作る、基礎的な製本ワークショップです。
まず担当者が用意した色とりどりの布と紙の中から

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好みのものを選びます。柄の布には無地のコットン紙を見返しにして色を合わせ、無地の布には柄入り紙を見返し紙として選びます。
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布に薄紙の接着芯をアイロン接着。今回は担当者がすでにのりしろや切る場所等の線を入れて切りそろえたものを用意してくれていました。
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アイロンをかけたら、あらかじめ付けてもらっている切り取り線で2枚に切っておきます。
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表紙用ボール紙(2ミリ厚)と見返し紙も既定のサイズに切ります。
薄めた木工用ボンドでボール紙・布・見返し紙を接着。
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それを製本用締め機を使って圧着するとともにボンドを乾かすこと1時間
(この待ち時間に他のレポートを報告)
下が乾かした後の写真です。
.
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綴じるための穴をハトメ抜きであけるのですが

Cimg0181


回転式穴あけパンチでは歯が立たない人が多く苦戦。


Cimg0184

握力の差なのか、何かコツがあるのか、途中まではあく人、まったくだめな人と女性陣は別れましたが、男性は良い音がしてスムーズにあいていました。

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回転式パンチでは穴が開かなかった人たちは、ポンチで穴あけ。
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トンカチでガンガンいくのできっと周囲にはご迷惑だったと思います。ごめんなさい。
Cimg0185  
穴が開いたら、ハトメ金具を装着。
革ひもで留めれば表紙は完成です。
Cimg0190


ここにA6判に切って2穴パンチで穴をあけたメモ用紙等をはさみこめば、世界に一つだけのノートの完成です。
 

参考にしたのは『 雑貨屋さんの製本教室―2時間で気ままにつくる 』 西川順子・斉藤珠美著 雷鳥社 2010年刊です。

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2015年10月26日 (月)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2015年10月

司書子さん☆今月の一冊二冊 2015年10


『話虫干し 』 小路幸也著 筑摩書房 ちくま文庫 2015年

 名作の中に入り込んでストーリーを改変してしまう“話(はなし)虫(むし)”を退治する図書館員の話。
 夏目漱石の名作『こゝろ』のストーリーがおかしくなっていることに気づいた新米図書館員は、虫干し(虫退治)のために作中に登場人物として入り込む。そこには生き生きした「K」や「先生」に交じって、漱石自身やホウムズ君(シャーロック・ホームズ)、ヘルン先生(ラフカディオ・ハーン)など、本来の『こゝろ』には出てこない人物が登場し、ストーリーが脱線していく。どうやら“話虫”自身も作中人物に変身しているらしく、それらしい怪しい男を見つけるが、捕まらない。いったい“話虫”とは何者か、そのもくろみとは何か? さぐるうちに司書は、「K」や「先生」がまことに愛すべき人たちで、作品を本来のストーリーに戻すと彼らは自死する運命だということに気づいてつらさを覚え始める。作中人物には幸せに生きてもらいたい、しかしこのままでは名作『こゝろ』は改変されて『こゝろ』ではなくなってしまう。本と物語を愛する図書館員が考えついた解決法とは?!(ま)



『すかたん』 朝井まかて 著 講談社文庫 2014年刊

    第3回「大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい本」に選ばれた作品。
ひょんなことから大阪の青物問屋で女中奉公をすることになった江戸娘の知里(ちさと)。
大阪の文化に戸惑いながらも、旨いもんに目覚めていく。ただ遊び人の若旦那の様子が気になりだして‥
    若旦那が今の朝ドラの若旦那と重なります。でも、ただの遊び人ではなく、青物に関しては闇雲に突っ走ります。その姿に知里も私も惹かれていくのでした。『すかたん』っていい大阪弁だなって思います。(あ)

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2015年10月 4日 (日)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2015年9月

司書子さん☆今月の一冊二冊 2015年9

司書子さんメンバーが思い思いのお薦めの本を紹介します。輪番で執筆します。

『お待ちしてます下町和菓子栗丸堂』 似鳥航一著 (メディアワークス文庫)
   (食欲の秋に引っかけて)
 香月日輪の作品以来、久々に続きが読みたくなった文庫のシリーズです。「和菓子+本」といえば『和菓子のアン』が頭に浮かんできますが、『和菓子のアン』では謎解きの方に興味が引かれるのに比べ、『下町和菓子栗丸堂』は、「和菓子が主役?」というぐらいの勢いで蘊蓄が語られています。それを語るのは葵さんという謎の部分の多い清楚な美人。その彼女が主人公=浅草にある和菓子屋の若い主人とともに、和菓子に関係した留まるところを知らない知識を披露しつつ、遭遇した問題を解決していきます。浅草という人情の豊かな下町を舞台に、和菓子のやさしい奥行きのある甘みが人のもつれたこころを解きほぐす様子にほっこりしていきます。豆大福・どら焼き・和三盆の干菓子、どれも特別珍しいものではありませんが、改めて本当においしい和菓子が食べたくなりました。突然両親が事故で亡くなり、腕はいいけれど跡を継いだ店の経営が苦しい状況が変わっていくのか、葵さんの謎がどこまで明らかにされるのか、二人の間はどこまで進むのか…次回作が楽しみです。(ゆ)



『チャーチル閣下の秘書』
 スーザン・イーリア・マクニール著
 東京創元社 (創元推理文庫) 2013年刊

 私は欧米のミステリやSFなどのエンタメ小説が割と好きなのですが、「推理小説が読みたい」と言って図書館に本を探しに来た生徒でも、なかなか海外のものは読んでくれないのが残念なところです。というわけで、あまり仕事に資することがない「お薦め本」ですが・・・。
 この本は題名からもわかる通り、第2次世界大戦下のイギリスを舞台にした時代ミステリです。主人公マギーは、アメリカ育ちのイギリス人。幼いころに両親を亡くし、アメリカの大学で教員をしている叔母に育てられ、MITの大学院への進学が決まっていた数学の秀才。けれど家族の事情で一時的にロンドンへ戻らなければならなくなり、いろいろあって首相官邸のタイピストとして雇われることになります。マギーは自分の数学の才が「女性だから」という理由で生かされないことにいらだっていますが・・・
 詳しく紹介するとネタバレになりそうなので、あらすじは割愛しますが、自立志向の強い女性の物語はもともと好みですし、フィクションとはいえ、知らなかった歴史の一端を知ることもできその点も興味深く読めました。マギーの個性的なハウスメイトたちも物語の重要な役を果たしますが、映画化に向いているなと思ったりします。このシリーズは現時点(2015年9月)で3巻まで邦訳出版されています。10月下旬に新刊が発売予定で、とても楽しみです。(ち)
 





漂流郵便局: 届け先のわからない手紙、預かります

久保田沙耶著 小学館 2015年刊

 瀬戸内の小島の元郵便局を活用して、設置された「漂流郵便局」。宛所のわからない、でも誰かに届けたいメッセージが書かれた手紙(はがき)をブリキ製の『私書箱」に入れて、現代アートとして展示している。マスメディアにもたくさん取り上げられたこの漂流郵便局を作ったのがこの本の著者。漂流郵便局のなりたちと、届いたはがきの一部の文面が載っている。ハガキの中身は亡き人への哀惜や、過ぎし日の思い出などばかりかと思ったら、生きているわが子への憤懣や、「ボイジャー1号へ」なんていうのとか、宇宙人宛、くじら宛などもあって、いろんな人のいろんな思いが寄せられている。展示の様子や展示物のビジュアルも魅力的だし、「局員」の制服もいい。島の写真もすてき。温かい気持ちになれる1冊(ち)

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2015年8月31日 (月)

司書子さん☆今月の一冊二冊 2015年8月

司書子さん☆今月の一冊二冊 2015年8

司書子さんメンバーが思い思いのお薦めの本を紹介します。輪番で執筆します。


『右手をご覧くださいませ バスガイドとめぐる京の旅』

ヤサカ観光バス株式会社監修 淡交社 2O15年3月 ¥1200(税抜)

ヤサカ観光のバスガイドの教則本をもとに編集された京都のガイドブックです。
ガイドさんの流暢なしゃべりがそのまま活字になっているので、するする~っと頭に入ってきます。車窓の風景を頭に浮かべながら読むことができるのは、京都人の特権ですが、京都人でも知らんかったわ!という蘊蓄もたくさん紹介されています。バスガイド教則本、すごい!
何年もかけて練り上げられてきた内容です。そして、これをすべて頭に入れてマイクを握るガイドさんは、もっとすごい!
観光コースは以下の5つ。
①洛中世界遺産をめぐる
②ぐるり、東山をゆく
③いざ、清水へ
④歴史の舞台をたどる
⑤嵐山、嵯峨野めぐり
そして当たり前のことですが、「右手をご覧くださいませ」と言うとき、ガイドさんは左手をあげているのですね。これぞ、「おもてなし」の基本かもしれません。
では、世界の観光都市・京都をめぐる旅を、ごゆっくり活字でお楽しみくださいませ。(C)







『煮干しの解剖教室 (オリジナル入門シリーズ)』

小林眞理子著 仮説社 2010年7月 ¥1,500(税抜)

煮干しを解剖するのっ!?
そのユニークさに惹かれて手にした絵本は、実は、めっちゃ深~い解剖学の本でした。煮干しは生前、カタクチイワシという名で海を泳いでいました。煮干しになって固く干からびても、かつての「命」がそこに宿っています。メスもハサミもピンセットも使わない解剖は、手で丁寧に「分解」していきます。心臓などいろいろな内蔵、煮干しになると見つけにくい浮き袋、小さな小さな耳石、そしてまさかの寄生虫(美味しい出汁には寄生虫の旨味も含まれてるのか!?)。読んでいる途中、絶対に煮干しが欲しくなります。実践したい衝動に駆られます。
そして、そんな小さな命をいただいて、私たちは生きているのだということにも気づかせてくれます。食物連鎖の底辺に属するカタクチイワシ、今日もきっとみなさんのお家の食卓に美味しさを届けているのでしょう。(C)

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